

平成16年度の人口動態統計における死因順位別死亡数は悪性新生物 320,358名に対し心疾患 159,625名 脳血管疾患 129,055名でした。つまりがんによって亡くなる方とほぼ同数が脳卒中や心筋梗塞などによって亡くなっていることになります。これらの疾患は動脈硬化性疾患と呼ばれており糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、高尿酸血症などが危険因子として知られています。
平成18年の流行語大賞トップテンにも選ばれたメタボリックシンドロームという言葉をご存じですか。これは今まで「境界領域」「予備軍」などと言われていた軽度の体重増加、高血圧、高血糖、高脂血症でも複合的に動脈硬化をすすめるため、「気をつける」程度ではなく、医療機関において適切な治療を受ける必要があるということを示した言葉です。
実際に血圧、肥満、血糖値、血中脂質の4項目すべてに異常が見られた場合には、二次検査を受ける費用や特定保健指導を受けた際の費用について労災保険が給付されます。
それでは健診や人間ドックなどでこれらの異常が指摘されたら具体的にはどうすれば良いのでしょうか。まずは動脈硬化や、糖尿病の合併症がどの程度であるかを評価します。当科では頚動脈超音波、負荷心電図などによって動脈硬化の進行度を定量的に評価しています。また、糖尿病網膜症については近隣の眼科と連携していますし、糖尿病腎症、糖尿病神経障害についても、血液検査、尿検査、理学的所見から状態を評価しています。
食事、運動療法についても独学、我流ではなく正しい知識に基づいて効果的に生活習慣を改善しましょう。当科では通り一遍の栄養指導にならないようまず受診者の食事内容、生活パターンをお聞きし、医師、管理栄養士がその人に合わせた改善点を提案します。
残念ながら食事、運動療法のみですべて解決するわけではありません。その場合には薬剤を用いた治療が必要となります。今までの大規模臨床研究によって、薬剤の使用は単に検査結果を改善させるのみでなく、実際に脳卒中や心筋梗塞、糖尿病合併症の発症予防効果があることが明らかになっています。また、特に糖尿病においては血糖を下げる薬には多くの種類がありますので、その作用機序についてきちんと説明してから使用を開始します。糖尿病と言われるとインスリン治療を不安に思う方もいらっしゃると思います。たしかに以前はインスリン治療は困難を伴うもので、インスリン分泌が障害されるタイプの糖尿病(1型糖尿病)の人でなければ合併症の進行した重症の人を中心に行う治療法でした。しかし最近の血糖測定器、インスリン製剤は非常に工夫されており、一人で電車に乗れる人なら誰にでも出来ます。針も細くなっており、蚊に刺されるよりも痛くありません。さらにインスリン注射には膵臓を保護する作用がある為、早めにインスリンを使用することで、その後の長期のインスリン使用を避ける事が出来ます。中には短期間のインスリン治療後飲み薬も不要になる人もいます。
当科における受診間隔の目安としては、食事、運動療法の指導のみで薬剤を使用していない方は3カ月毎、内服薬の投与を受けられる方は2カ月毎、インスリン治療を受けられる方は1カ月毎と考えていただければ良いと思います。受診時には毎回血液検査、尿検査を受けていただきますが、当日検査を受けられると結果が出るまでに1時間程かかります。その為受診予定日の1週間前に検査のみ受けていただくと当日はあまり待たずに診察が受けられます。